2002 年4 月15 日
こうのす里山くらぶ 代表 志賀壮史

背景
現在、私たちに身近な里山の多くは、管理放棄による自然遷移が進み、暗くうっそうとした常緑樹主体の森へと変化しつつあります。大樹が育ち、森がより自然の状態に戻っていくという良い点がある一方で、日光を奪われた落葉樹や草花が減り、四季折々の景観や様々な生き物のすむ環境が失われつつあるという残念な点があります。薄暗く近付きがたい森からは人々の意識も離れ、荒地化やゴミの不法投棄などが問題とされる場合もあります。これを受けて近年、森の手入れや維持・管理を行う市民活動が全国的に活発になってきています。

きっかけ
そのような里山の一つである福岡市内の鴻巣山で、平成11 年度から2 年間にわたり福岡市と(財)福岡市森と緑のまちづくり協会の主催で、次の二つの事業が実施されました。
「鴻巣山保全計画づくりワークショップ」___平成11 年度、全4 回
「鴻巣山森づくりワークショップ」______平成12 年度、全9 回
九州芸術工科大学重松研究室の企画・運営のもと、市民有志、行政、専門家が共に森の手入れで汗を流し、鴻巣山の将来像や今後の森づくり活動について話し合いを行いました。2 年間を通じて得られたものは、鴻巣山での森づくりにとどまらず、知り合った市民、行政職員、研究者や造園技術者がお互いに協力して森づくりに取り組む関係(パートナーシップ)でした。

「鴻巣山で森づくりを楽しむ会」準備会
平成13 年度には、それまで2 年間のワークショップの参加者や事務局メンバーが中心になり「鴻巣山で森づくりを楽しむ会」を結成しました。これは鴻巣山での森づくり活動を続けていくための準備会的な位置付けで、私たち「こうのす里山くらぶ」の前身となります。平成13 年度の1年間で、手作りの遊歩道の補修や、竹・笹類の除伐などを行ったほか、福岡市緑化月間のイベントとして「鴻巣山ウォーキング」の企画・実施、また「緑のボランティア講座(森と緑のまちづくり協会主催)」受講生の受け入れ、さらに「ふくおか里山会議」を実施しました。年間の参加人数は、延べ435 名(会員:211 名、会員外:224 名)で、これらと並行して14 年度の正式発足に向けた会則づくりを進めました。

「こうのす里山くらぶ」の設立と活動内容
平成14 年4 月7 日、鴻巣山の森の中で設立総会を行い、正式に「こうのす里山くらぶ」として出発することとなりました。会則にあるように、「鴻巣山の多様な自然環境を保全し、多くの人と楽しみを分ち合いながら、森と人が共に生きるこれからの里山文化を創造する」ことを目的に、今後も活動を続けていきます。
具体的には、季節感があり多様な生き物がすめる森づくりを目標に、育ち過ぎた常緑広葉樹の適正な間引き管理を行ないます。これにより、枯れつつあるヤマザクラやクリなどの落葉広葉樹を守ります。また、増え広がる竹や笹などは適度に伐採管理を行い多様性の高い環境を創出するとともに、市民の憩いの場、散策の場として気持ちの良い景観の森へと誘導します。伐採した材は、大きさをそろえ、林内に積み上げておくことで小動物の住処として活用するほか、周辺の土留め工、ベンチ、堆肥置き場などに利用します。その他の利用や林外への持ち出しについては、随時、福岡市担当部局との調整を行った上で決めるものとします。
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